ピリギゃルが将棋倶楽部24で初段になる50の方法

期間限定で公開中。将棋で強くなるための上達法のあれこれ。難しい符号は一切なし。将棋以外にも応用できるので、ご愛読を。

棋士の前にひとりの人間として(5)

ピリギゃルが将棋倶楽部24(将棋ウォーズ)で初段になる50の方法

棋士の前にひとりの人間として(5)

 

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Εν αρχηι ην ο Λόγος

 

はじめに言葉ありき。

言わずと知れた、ヨハネ福音書に記されし一文である。

 

ただし、これは日本語で解釈すると、真意を読み損ねるだろう。

ギリシア語で読むと、「言葉」ではなく、「ロゴス」とあるのだから。

 

もちろん、「ロゴス」には、「言葉」という意味もある。

しかし、万物は流転するにもかかわらず、浮かび上がってくるもの。

理性や法則のことをロゴスというわけである。

したがって、ただの言葉のことと解釈してしまうと捉え損ねるのだ。

 

ひとくちに言葉といっても、万物の流転に流されるものもあるだろう。

そうかと思うと、万物の流転に流されない、普遍的なロゴスもある。

 

言葉というものの大切さ。

言葉というものの頼りなさ。

両方に目配りをすることが大事だと思う。

 

たとえば、ある俳優の動きを映画監督が修正するとしよう。

「そこで手を挙げて」という。

「はい、わかりました」と答える。

これでは演技の流れが止まってしまう。

 

「そこで手を挙げて」という。

(すぐさま役者が手を挙げる)

これが正しい演出の進め方である。

 

役者はあくまでも芝居の世界の中に浸っている。

が、天の声のようなものが聞こえて、勝手に手が挙がってしまう。

 

この場合、言葉はあくまでも補助的な手段にすぎない。

より重視されるべきことは、世界全体の流れである。

 

言葉は、音声でもカンペでも、どちらでも構わない。

監督は言葉の代わりに、直に手を掴んで挙げさせても問題はない。

キャメラが回っていないのであるならば。

手段だから、極端な話、電気ショックを与えるでもいいわけだ。

 

音楽の世界でも同じこと。

おしゃべりな指揮者は嫌われる。

ただ、「僕の棒をよく見ていてね」と言えば、それで済む。

 

相撲の世界でも同じことだ。

百聞は一見に如かずで、技を身体で感得すれば、言葉は要らない。

 

将棋だって、究極は、言葉不要。

ただ静かに、盤上を凝視していれば、それでいい。

感想戦観戦記者がいなければ、言葉の占める割合は下がるだろう。

将棋が強いことと、将棋を言語化できることは、別物なのである。

 

そうはいっても、言葉をないがしろにしてよいというわけでもない。

補助的な手段の中では、最も重要なツールなのだから。

電気ショックよりは、言葉の方が有用性は高い。

 

実際、以前に紹介したとおり、藤井猛九段は、言葉の有用性を説いている。

 

言葉を大事にすることが、成長や進歩につながる。

特に、指導者は言葉を大事にしなければならないだろう。

 

その証拠に、すぐれた演出家、指揮者、監督は皆、言葉の達人である。

と同時に、彼らは沈黙の達人でもある。

まさに沈黙は金、雄弁は銀ということを深いレベルで理解しているわけだ。

 

ことばと身体 「言語の手前」の人類学 (講談社選書メチエ)

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要するに、何を言わんとしているか。

ここで言いたいことは、次のようなことである。

 

「本好き人好き」

 

これは国文学者・書誌学者の故・谷沢永一の雑誌連載の標題。

このキャッチコピーのセンスは、群を抜いていると、うならされた。

 

失礼かもしれぬが、このコピーは谷沢本人をも優に超えていると思った。

肝腎のその記事は、主観を完全に排した本の紹介100%、本が主役の記事。

暗黙の自己批判がピリッと利いていて、ニヤリとさせる。

 

読書をしなければ、人間性を磨くことはできない。

けれども、経験を積まず、読書だけで人間性を磨くこともできない。

 

読書抜き、経験だけで本を書ける人も、稀にはいるだろう。

けれども、同じ経験を持つなら、読書経験もある人の方がよい。

 

むろん経験抜き、読書だけだと、本は書けても、説得力がにじみ出ない。

 

やはり本を読んで、実際の経験も積んで、はじめて人間性に到達できるわけだ。

「人間である」のではなく、「人間になる」ことが大事だ。

 

本好き、人好き、将棋好き。

読書と経験の両輪駆動で、これからの人生を歩んでいきたいと思う。

 

【本日のまとめ】

・強くなりたかったら、読書家になろう。

・強くなりたかったら、人生の経験値を高めよう。

 

人間通 (新潮文庫)

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